大人たちが子供たちに読み聞かせをしてあげるための、無料のお話集ブログです。素人がお話を作っているので、内容は販売されている絵本程は立派でないと思いますが、無料なので、子供たちを寝かせる時や、病院での待ち時間や、退屈しちゃって困っている時などに、スマートフォンからでも手軽にご利用いただけます。著作権はございますので、物語を転載,複製,改編出版することはご遠慮ください。
2016年11月8日火曜日
怠け者の玉吉
遠い昔の事、越後の国のある村に玉吉(たまきち)という若者がいました。
玉吉は怠け者で、村仕事をしていても、何か理由を考えては仕事をさぼる事ばかりを考えておりました。
ある晴れた日、他の村の者たちと稲刈りをしていた時の事、玉吉はまた怠けたいと思い、村の者たちにこう言いました。
「おら、どうもさっきからお腹が痛いんだ。治るまでちょっくら暖かいところで休んでくるから、悪いけど、おらの分まで頑張っておくれよ。」
村の者たちは、「またか。」と呆れておりましたが、玉吉に構っていては稲刈りが終わらないので、黙々と稲刈りを続けました。
田んぼを抜け出した玉吉は、仕事をさぼることができたので、嬉しくなって飛び跳ねながら、村のお寺の方へ走っていきました。
もちろんお腹が痛いというのは嘘なので、飛び跳ねながら走ってもへっちゃらです。
村のお寺は古くからある立派なお寺で、お寺の周りは高い塀で囲まれており、風が吹き込んでこないので、天気の良いこんな日は、昼寝をするのにちょうど良い所でした。
玉吉は、お寺の門をこっそり開けて中に入ました。
お墓が並ぶ小道を抜けて、途中のお地蔵様にお供えしてあったお団子を勝手に盗んでぱくっと食べてしまいました。
「うーん、おいしいお団子だ。」
その後、お寺の和尚さんに見つからないように、お寺の西側の縁側にごろんと寝ころびました。
ここで昼寝をすることに決めたのです。
寝ることが大好きな玉吉は十秒もしないうちに眠ってしまいました。
グースカピー グースカピー
グーグー スカピー グースカピー
しばらく寝ていた玉吉は、夕方になってようやく目が覚めました。
「もうすぐ夕飯だな。そろそろ帰ろうかな。」とつぶやいて、お寺の門の方へ歩いていきました。
お地蔵様の前を通り過ぎたすぐあと、さっきまで晴れていた空は急に黒い雲に覆われて、あたりは暗くなってきました。
まもなく雨が降ってきたので、玉吉は走ることにしました。
お墓が並ぶ小道を急いで通り過ぎようとしましたが、おかしなことに気が付きました。
さっきお地蔵様の前を通り過ぎたはずなのに、またお地蔵様が目の前に見えます。
「このお寺にはお地蔵様は一つしかないはずなのにおかしいな。」と思いながらも、お地蔵様の前を通り過ぎて走り続けました。
雨は、どんどん強くなっていきます。
しばらくすると、また、お地蔵様が見えてきました。
「こりゃ大変だ。さっきお団子を盗んだから、罰があたったかもしれない。」と思いました。
体はびしょびしょ、足もくたくたになった玉吉は、もう懲り懲りだと思い、お地蔵様に謝ることにしました。
お地蔵様の前で膝をつき、目を閉じてお地蔵様に謝りました。
「お地蔵様、さっきはすみませんでした。もう二度とこのようなことはしません。」
ゆっくり目を開けるとお地蔵様は目の前から消えていました。
玉吉は、お地蔵さまが自分を許してくれたに違いないと思い、また門の方へ走り出しました。
今度は門にたどり着くことができました。
すっかり日も暮れて、辺りはもう真っ暗です。
これでやっと外に出られると思い、門を開けようとすると、今度は門が重くて開きません。
押しても引いてもびくともしません。
ふっと後ろに気配を感じ振り返ると、お墓の方から、一つ目のお化けや首の長いろくろ首や傘の形のお化けなどがすごい速さで近づいてきました。
「ぎゃあああ。」
玉吉は悲鳴を上げて後ずさりしました。
すると、ぐにゃっと何か軟らかいものを踏んだ感じがしました。
下を見ると足元には緑色の蛇が、いつの間にかうじゃうじゃと群がっていました。
迫ってくるお化けと足元の蛇を見て恐ろしくなった玉吉は涙を流してと泣き出してしまいました。
そして、大きな声で叫びました。
「村のみんな、ごめんなさーい。もう二度とさぼったりしないから、どうかおらを助けてくださーい。」
すると、あたりが急に眩しいくらい明るくなりました。
玉吉がつぶっていた目をゆっくりと開けると、玉吉はなぜかお寺の縁側に横になっていました。
どうやら悪い夢を見ていたようです。着物は涙と汗でびしょびしょになっていました。
玉吉は村のみんなに本当に謝ろうと思い、田んぼに向かって泣きながら歩いていきました。
今度は無事にお寺の門を開けることができ、外にでることができました。
それから、玉吉は二度と悪さはせずに、真面目に村のお手伝いをするようになりましたとさ。
めでたしめでたし。
作:ウエスギ セン
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