大人たちが子供たちに読み聞かせをしてあげるための、無料のお話集ブログです。素人がお話を作っているので、内容は販売されている絵本程は立派でないと思いますが、無料なので、子供たちを寝かせる時や、病院での待ち時間や、退屈しちゃって困っている時などに、スマートフォンからでも手軽にご利用いただけます。著作権はございますので、物語を転載,複製,改編出版することはご遠慮ください。
2016年11月9日水曜日
フライパンのスクート
ここは、人気のレストラン、その名も『パナメーラ』。
毎日たくさんのお客さんが、おいしい料理を食べようとこのレストランにやってきます。
パナメーラの厨房には、真っ黒になったフライパンがあります。
今のコックさんも、その前に働いていたコックさんも、そのまた前に働いていたコックさんも、そのまた前に働いていたコックさんも使っていた、とても使いやすいフライパンです。
そのフライパンには名前がつけられていました。
その名は『スクート』。
何十年も前のコックさんが、このフライパンの事が大変気に入っていたので、名前をつけたのでした。
スクートは初めから黒いフライパンだったわけではありません。
初めは銀色のフライパンでした。
今から50年前のある日、その時のコックさんが新しい料理を考えました。
それは焼いた分厚いお肉に葡萄の皮のソースをかけたものでした。
この料理はとてもおいしいと評判になり、一日に百回も作る日が何年も続きました。
葡萄の皮のソースを作るとき、葡萄の皮をじっくりとスクートで炒めながら作るため、スクートは年々紫色に染まっていきました。
今から30年前のある日、ある若者がパナメーラで修業しながら働くことになりました。
まだそんなに料理を作ったことがなかったので、その若者は料理を作るのに、何度も何度も失敗をしました。
お肉を焼くときに焦がしてしまったり、玉ねぎを炒めるときに焦がしてしまったり、バターを温めるときに焦がしてしまったり。
スクートは徐々に茶色い色に染まっていきました。
それでも若者は、スクートをいつもきれいに洗っていたので、色は変わってしまっても、その表面はピカピカでした。
今では、その若者もパナメーラの料理長となっております。
今から10年前のある日、有名なパティシエ、『サマンサ』が、デザート作りのコックさんとして、パナメーラに入ってきました。
サマンサはパナメーラにあったフライパンのスクートを見て、
「まぁ、なんて使いやすそうなフライパンなんでしょう。これならたくさんの美味しいデザートを作ることができそうだわ。」
と言って、それから毎日、スクートを使ってデザートを作り続けました。
サマンサは、チョコレートを使ったデザートを作るのが得意だったので、毎日毎日、いろんな種類のチョコレートのデザートを作りました。
スクートは、チョコレートの色が徐々に移ってしまい、やがて真っ黒になっていきました。
色は変わってしまいましたが、丈夫なスクートは今もパナメーラで活躍しています。
どのコックも丁寧に手入れをしていたので、スクートは真っ黒だけどピカピカの大変美しいフライパンになったのでした。
そして、今日もスクートをつかって調理された料理を、たくさんのお客さんが、
「おいしい。おいしい。」
と言って食べて喜んでくれるのでした。
作:ウエスギ セン
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