2016年11月11日金曜日

カレーライスの味がする野菜



ここは、シンガポールにある50階建てのビル。

世界各地の天才科学者たちが、このビルの中にある研究所で、植物の研究をしていました。

研究所の名前は『ベジタブルマスターズラボ』。

ベジタブルマスターズラボの長年の研究テーマは、カレーライスの味がする野菜の研究でした。
天才科学者たちは、とても熱心にカレーライスの味がする野菜の開発に取り組んでいました。

このビルの研究所には、植物をとんでもない早さで成長させることができるとても高価な機械があったので、研究もどんどん進んでいきました。

かぼちゃと唐辛子と玉ねぎとジャガイモと人参と林檎と数種類のハーブを、何度も何度も掛け合わせ、ついにカレーライスの味がする野菜を作ることができました。

どんな形や色をしているかというと、形はかぼちゃのような形です。表面は緑色の皮で覆われていて、中身は薄いクリーム色です。

中には、アボカドのように大きくて丸い種が一つ入っています。種は白とオレンジ色の縞々模様になっています。

茹でて食べると、ジャガイモのような食感で、味はカレーライスのような味がするのでした。



天才科学者たちを集めて、高価な高性能の機械を使って開発した野菜なので、この野菜が売られる値段は、とても高くなってしまいました。

日本では、この野菜1つと冷蔵庫1台が、同じくらいの値段になってしまいました。

食べてみたいと思う人はたくさんいましたが、値段が高すぎるので、ほとんど売れません。

もちろん八百屋さんやスーパーマーケットにも置いてません。

欲しい人は、電話やインターネットでベジタブルマスターズラボに注文をします。

注文を受けたベジタブルマスターズラボは、シンガポールの50階建てのビルの屋上にある畑に、この野菜の種を植えます。

それから大事大事に育てて、だいたい5ヵ月後に水色の美しい花が咲き、その3ヵ月後に実がなります。

それなので、食べたいと思って注文してから、だいたい8ヵ月~9ヵ月くらいでようやく手元に届くのです。



値段が高くて、注文してから届くまで時間がかかるこの野菜は、どんどん人気がなくなってしまい、ついに開発したベジタブルマスターズラボでも作るのをやめてしまいました。

今では手に入らなくなってしまったカレーライスの味がする野菜は、幻の野菜となってしまいました。

しかしながら、食べたことがある人たちの中には、その種を大事にとっておいた人や、庭に植えた人もいるそうです。

庭に植えられた種が元気に育って、その実を野生の鳥や動物たちが食べて、食べ残された種が偶然土に埋まって、また芽が出るということはよくあることなので、今も世界のどこかで密かに繁殖しているかもしれません。

皆さんの周りにも、いろんな植物が生えていますが、よーく見てみたらカレーライスの味がする野菜が生えているかもしれませんよ。



作:ウエスギ セン

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